オンラインZINEを作ろう!

#OnlineZine

このサイトはオンラインの「ZINE」を名乗っています。プラットフォームの支配を逃れ、オンラインコミュニケーションを自分たちの手に取り戻すために、紙のZINEを作る延長線上でオンラインでもZINEを作ろうという試みです。フェイクとヘイトとスパムにはもううんざり、そんな投稿を流して金を稼いでいるプラットフォームも最悪。しかし、惰性でSNSを見続けてしまう……。そんな日々を終わらせるために、私たちは一度SNS以前の世界を思い出す必要があるのではないでしょうか。

e-zine、テキストサイト、indie web

そもそも、WebサイトにZINEという言葉を使うのは決して新しい発想ではありません。インターネット黎明期において、紙のZINEを作っていた人たちが元データを配信するといった形で紙のZINE文化とインターネットの発信は接続しており、それらはe-zineなどと呼ばれていました。ここ十数年の間に社会はネットなしでは成り立たなくなりましたが、それ以前のインターネットは長らく一部の物好きな人たちで溢れていて自主出版と近い文化だったのです。

ある程度以上の年齢であれば、テキストサイトを運営していたことがある人もいるでしょう。ジオシティーズなどの無料ホームページ作成サービスを使ってあれこれ工夫して見た目を整え、気の利いたことを書いてみようとしたり好きなコンテンツの二次創作をしてみたり……もっとも、経験がある人にとっては懐かしいと同時に黒歴史でもあるかもしれません。しかし、そこでの読者や他のサイト主とのつながりは、プラットフォームのアルゴリズムに出会わされたものではなかったはずです。

ですが、そうした個人サイトの多くはジオシティーズの終了とともに大半が失われてしまいました。いわゆるSNSやブログサービスに登録してアカウントを作成するという形ではなく、見た目もコンテンツも自分でつくっていたとはいえ、特定のプラットフォームに依存しているとその運営方針やサービス終了の影響から逃れることはできません。

日本でジオシティーズが終了したのは2019年ですが、実は海外では2009年にはサービスが終了していました。その中で、2010年代にはそうしたプラットフォーム依存に対する危機感からオープンソースのHP作成ツールである「Neo Cities」や「Indie Web」という運動が生まれています。

ここで、Indie Webについて簡単に紹介しておきましょう。

この運動は、「「巨大なSNSやWebサービス」に頼りきりにならない、一人ひとりが主役のコミュニティ」として立ち上げられ、いくつかの原則を掲げています。

その根底にあるのは、独自のドメインを持ち、データを自分の管理下に置くという理念です。

ドメインとはインターネット上の住所のようなもので、「○○.com」のような一連の文字列が自分のサイトの場所を表します。ただ、現実の住所と異なるのは、実際のサーバーがどこにあっても登録すれば「○○.com」にアクセスするだけでそのサイトにたどり着けるということです。もし今自分のサイトがあるサーバー会社がサービスを終了したり、何かの都合でホスティングサービスを乗り換えたりしても、そのドメインを使える権利さえ持ち続けていれば同じ住所でサイトを公開し続けることができます。維持するためには年間数千円がかかりますが、逆にいえばお金がかかるのはここくらいです。

データを自分でもつことも重要です。XやInstagramなどに投稿したデータは、運営企業のサーバーに保存されています。そのデータは、投稿主ですら運営企業に頼まないと削除などの管理を行うことができません。時間が立つにつれてUIやアルゴリズムが変わって、意図しない見た目で意図しない人に届いてしまう可能性もあります。また、サービス終了やアカウントの凍結によって突然これまでの投稿にアクセスできなくなる可能性があります。大抵のプラットフォームには投稿をまとめてダウンロードできる機能が一応ついていますが、実際に自分の端末にバックアップを取っている人はどれだけいるでしょうか。

しかし、自分ですべてのデータを持っていれば、仮にWebサイトを作るためにつかったサービスやフレームワークが時代遅れになったとしても、別のサイトを構築し直して再び公開することができます。また、自分のポリシーに合わせてその一部をSNSなどに切り出して投稿することもできます。そして、そのSNSが使えなくなってもこれまでの投稿を失うことはありません。

Online Zineをつくるためのいくつかの提案

こうした過去の試みから学びつつ、オンラインのZINEを作るうえで重要ないくつかの方針を示したいと思います。もちろんこの全てに従う必要はないので、必要に応じて足し引きしながら活用してみてください。

まず、Indie Webの基本的な理念である「独自のドメインを持ち、データを自分の管理下に置く」ということは重要です。これにより、サイトを作る際に使ったツールやサービスが使えなくなっても新しく再構築することができます。

  • ドメインを取得する
  • データは自分でもつ

しかし、プラットフォームに依存しないで作るということは同時に技術も求められます。AIを使って簡単にプログラミングができるようになってきましたが、自分で何がどう動いているかを理解できていないと対処できない問題も発生します。気をつけるべきことはいくつも挙げることができるでしょうが、ここでは「記法」と「セキュリティ」について書いておこうと思います。

まずは記法について。例えばHTMLでは見出しを「h1」、本文を「p」といったタグで囲みます。これにCSSで「h1」はどのフォントでどの大きさ、「p」はどのフォントでどの大きさ……といったふうに見た目を指定していきますが、何も手を加えなくても「h1」は太字で表示されることが多くあります。しかし、だからといって太字にするために強調したい本文の一部に「h1」を使っていると、検索エンジンはその中身を正しく認識することができません。実はテキストサイトの時代には多くの管理者がこうした誤った記法でサイトを作っていたために検索しても上位に表示されにくいということがありました。そして、テキストサイトの衰退とともにブログが台頭した要因として、専用のフォームから投稿することで知識がなくても正しいHTMLの書き方に変換されるということがしばしば挙げられます。もちろん、検索エンジンを撹乱するためにあえて間違えるというのであれば、それはそれで面白いかもしれませんが。

そしてセキュリティについて。Webサイトは全世界に公開されているものですから、当然ながら悪意ある攻撃者もアクセスすることができます。自分や保存している他人の個人情報が盗まれたり、サイバー攻撃の踏み台にされたりする可能性は常にあり、その対策をしなければなりません。一般的に、自由に入力できるフォームを設置したりすることによってユーザーが何かを送信できる状態にあると、そこから悪意のあるコードを入れられるケースがあります。また、使用するツールやサービス、フレームワークの脆弱性が見つかっている場合、きちんと対処されているかを確かめましょう。さらに、意図しない挙動によって自分の個人情報やサイトの重要な情報が送信されるようになっているケースもあります。そして今どきそうでないものを作るほうが難しいと思いますが……HTTPSにはきちんと対応しておきましょう。無防備なサイトを作らないためには対策が必要です。

  • 正しい記法で書く
  • セキュリティ対策をとる

また、当たり前のことですが、メディアを作るうえではその内容に責任をもつ必要があります。表現の自由も守られるべきなので何がよくて何が悪いということを具体的に示すことはできませんが、プライバシーの侵害や差別を煽るような投稿、誤情報の発信には十分注意しましょう。センシティブな内容については表示されるまでにワンクッション挟んだり、ゾーニングをしたりすることも大切です。

  • 内容には責任をもつ

さらに、より良いものを作るうえで重要なのは「読んでもらえる設計にする」「Webサイトのメディア的特性について考える」ことです。

私たちがプラットフォームから離れられないのは、私たち自身がプラットフォーム中心の情報環境に慣れてしまっているからです。実際、多くの人にとって情報を得ること=SNSのタイムラインやレコメンドから有用そうなものを選別することになっているのではないでしょうか。

対象読者が「検索する」「ブックマークしたサイトを定期的に訪れて更新を確かめる」「サイトからリンクを辿ってネットサーフィンをする」といった行動をあまりしないにも関わらず、検索やリンクのみでしか読むことのできないサイトを作っても読んでもらえないのは当然です。ですから、他のSNSやWebサイト、サービスと合わせて日常の中や想定している状況できちんと自分のサイトを訪れてもらえるように設計をする必要があります。

例えば、このサイトでは全ての記事をRSSで全文配信しています。RSSはニュースやブログなどのウェブサイトの更新情報を配信するための文書フォーマットで、RSSリーダーと呼ばれるアプリやソフトウェアを使うことで購読することができます。アプリ内でサイトをフォローしたり、リンクを登録したりすることでニュースアプリのように好きなサイトの更新を受け取ることができます。実は新聞社や商業Webメディアの多くもRSS配信をしていて、中には全文配信してしまっているところもあり、RSSリーダーで読めば広告無しでスムーズに読めることもあるのです。noteやポッドキャストなどのサービスでは自動的にRSS配信されるので、そうした場所で発信している個人もフォローすることができます。

有名なリーダーアプリにはFeedlyがあり、こちらがおすすめですが、RSSという規格は特定のアプリ専用のものではありません。RSSリーダーであれば他のアプリでも購読することができます。たとえFeedlyがサービスを終了しても他のアプリを使うことができますし、自分でRSSリーダーを開発することもできるでしょう。

このように、RSS配信を行うことで、プラットフォームに依存することなく他のWebサイトやSNSといっしょに閲覧できる仕組みを作ることができます。個人がそれぞれにサイトを立ち上げていくとそれぞれ巡回していくのが大変ですが、多くのサイトがこの方式を採用すれば、今SNSでタイムラインに流れてくる更新情報をチェックするのとあまり変わらない感覚で個人が作ったオンラインのZINEを購読することができるのではないでしょうか。賛同していただける方にははぜひ一緒に取り入れていただきたい仕様です。

また、Webサイトのメディア的特性についても考えてみましょう。

例えば、紙の本は何も考えなければ前から順番に読んでいくようにできています。しかし、Webサイトはそうではありません。ランダムな順番で記事を表示させることもできますし、途中で分岐させることもできます。検索機能やタグをつける、あるいは内容の近さでマッピングしてみるといったこともできるかもしれません。アニメーションや操作に合わせたインタラクションをつければ、様々なユーザー体験を作ることが可能です。デザインやアーキテクチャの設計は、それ自体がひとつの表現になります。

また、ハイパーリンクを活用することで、出典や別の記事への誘導だけではなくプラットフォームに頼らない繋がりを作ることができます。かつてテキストサイトにはリンク集があり、知り合いのサイトやおすすめのサイトを紹介していました。Webサイトは基本的に一方向のコミュニケーションになりがちですが、互いにリンクを貼りあうことでネットワークを作ることができます。好きなサイトのリンク集には、感性の近い管理人が集めたリンクが貼ってあり、そこを辿っていくことでさらに良いサイトを見つけていく。インターネットを通じた繋がりはもともとはそういったものでした。オンラインのZINEというアイデアに賛同していただけて、掲載を希望の方は、aboutページのフォームから連絡していただければ(法的・倫理的にまずいものが載っている、露骨なPV数稼ぎや収益目的であるといった場合を除いて)基本的にこのサイトでもご紹介します。

  • 読んでもらえる設計にする
  • Webサイトのメディア的特性を考える

以上が、ひとまずオンラインのZINEづくりを運動として広げていく上での提案です。基本的には公開で何かを発信する人がやるべきことをまとめた上で、面白いWebコンテンツを作るために工夫できることについてもいくつか書きました。

最後にひとつ付け足すと、自分のために自分が作りたいものを作るということが最も重要です。安全で楽しいオンラインZINE体験を広げていきましょう!

Online Zineを作ろう!

もしこの取り組みに賛同していただける方がいれば、ぜひ自分でも作ってみたり、紹介したりしていただけると嬉しいです。ハッシュタグ「#MakeZinesOnline」も用意したので、各SNSで使ってみてください。また、作った際にはぜひフォームからご連絡いただければ見に行きます。

それでは!

コンタクトフォームはこちら https://tally.so/r/685jNo

Author:片瀬